上原樹苗
横井秀一
私たちが考える
これからの森林のために
Uehara Jubyo
上原樹苗
Producer
令和2年度(第59回)農林水産祭 天皇杯(最優秀賞)→受賞理由概要
令和元年度 全国山林苗畑品評会 農林水産大臣賞
明治初期に桑苗を生産したのが始まり。昭和30年頃に造林用苗木の生産を開始した。
東日本大震災で、社屋、苗畑及び各種機械の多くを津波で失う被害を受けながらも事業を継続し、コンテナ苗生産や作業の機械化等による効率化を進めた。
被災前の年間生産量が150万本に対し、現在は200万本を超えており、本数・樹種数ともに他に類を見ない規模を誇る。
独自に最適化した培土の配合、作業機械や作業システムの改良、コンテナ苗や早世樹の育苗、栽培方法のデータベース化やマニュアル化等、様々な技術を保有。
苗木生産者にとどまらず、造林・伐採を主とする事業体も含めて全国各地から視察を受け入れ、育苗技術の普及に努めている。
戦後拡大造林において国内の造林地の大半が木材生産用のスギやヒノキの針葉樹林になりました。
林業を営む上で木材生産はとても重要な産業でありこれからも木材生産をして森林からの恩恵を受け管理しなければならないと考えます。一方でかつて植えられた針葉樹の造林地などの手入れ不足や放置林の拡大も目立っており公益的機能も果たさなければならない森林としての役割どころか災害の温床になっているような場所もあるかと思います。
近現代社会においては温室効果ガスの問題や急激な気候変動による豪雨被害なども考えながら手入れが難しい森林においては広葉樹の森林に変更しつつ効率の良い場所は木材生産の針葉樹を植えるなどをして森林を作っていかなければならないと思います。そこでこれからは樹種を選択して森をデザイン出来る時代に改めてなりつつあると思います。適地適木を考え森林をデザインして目標や希望する森林を作りそこから安心や恩恵を受けて管理し向き合っていくそんな森林がこれからとても重要になっていくと思います。
Shuichi Yokoi
横井 秀一
Adviser
造林技術研究所 代表
岐阜県立森林文化アカデミー 特任教授
飛騨市 広葉樹のまちづくり推進アドバイザー
岐阜県各務原市在住
1960年生まれ、愛知県出身。元岐阜県職員。在職中の所属は、森林研究所(前身を含む)と森林文化アカデミー。研究所時代の主なテーマは、用材生産のための広葉樹林施業、針葉樹人工林長伐期施業における樹冠管理技術、多雪地のスギ不成績造林地の修復。森林文化アカデミーでは、主に林業全般と造林技術に関する教科を担当。退職後は、造林技術研究所を主宰し、造林分野の技術指導・技術相談に勤しむ。著書(共著)に、「雪国の森づくり」、「広葉樹の森づくり」、「森林未来会議」など。
その場所場所に、ふさわしい森林がある。一言で言うと、これからの森林はこうあってほしいですね。その結果として、日本の森林がバランスのよいものになると素晴らしいと考えています。
今の日本の森林は、バランスが悪いと思います。おかしくなったバランスを正したい。そう思うのですが、どういったバランスが正しいかは誰にもわかりません。そもそも、唯一の正解などないでしょう。
なら、どうするか。明らかに均衡を崩している部分を個別に改変していく。そこから始めるしかないと思っています。
まずは、日本の森林の約4割を占める針葉樹人工林。これら人工林は、経済的な目的でつくられたものです。しかし残念ながら、日本全体や各地域の木材需要はその面積を必要としていないでしょう。針葉樹の木材生産は、きちんと管理できる人工林に委ねるようにしていけば十分だと思います。
主伐によって目的を果たした人工林は、およそ7割が放置されています。管理が放棄され、目的を果たさないどころか、存在そのものが非難されるような人工林もあります。これらをその場所にふさわしい森林に変えていくことが必要です。
次に、広葉樹を主体とする二次林。ここでは、マツ枯れやナラ枯れにより主林木が枯損するという問題が発生しています。被害を受けた森林、これから受けそうな森林の取り扱いが課題です。広葉樹材の生産に適した二次林は、木材生産を視野に入れてもいいでしょう。
課題は山積ですが、森林づくりはおもしろい。そう思って取り組んでいけるといいですね。
未来の森林をどのようにしたいかを選択して
森林をデザインする
未来の森林を
どのようにしたいかを選択して
森林をデザインする
現在の状況はどうですか?
手入れが出来ていない
昔に植えたスギやヒノキ林
しっかり手入れができる環境の
スギやヒノキ林
将来どのようにしたいですか?
手入れが出来ていない
昔に植えたスギやヒノキ林
pattern1 伐採して広葉樹の森林にしたい
pattern2 全てを伐採しないで段階的に針葉樹と広葉樹の森林にしたい
しっかり手入れができる環境の
スギやヒノキ林
pattern1 伐採後また同じように針葉樹を植えて木材生産したい
pattern2 伐採後有用広葉樹を植えて木材や林産物を生産したい
実際に森林をデザインしてみよう
実際に森林を
デザインしてみよう
計画
計画の際に補助制度の活用が可能か、森林の土壌や地形も考慮して計画を立てると良いでしょう。
補助金の利用に関しては、各都道府県の「各種造林補助制度」を活用してください。
→お問い合わせ先 参照 林野庁
苗木の調達
●針葉樹の苗木について
基本的に各都道府県内で調達する。希望の樹種の生産が無い場合は林業種苗法の配布区域を参照し苗木調達を図る。
→林業種苗法の配布区域
●広葉樹の苗木について
地域や標高などを考慮し樹種の設定を行い、苗木の調達を図る。
手法とポイント
苗木の取り扱いのポイント
針葉樹苗木
針葉樹の苗木はコンテナ苗が現在主流になってきておりある程度は植栽時期を選ばないので根部分の乾燥を注意して頂ければ良いと思います。
広葉樹苗木
広葉樹の苗木は種類も大きさも様々ですので用途や場所に応じて選択して下さい。はだか苗が一般的であるため苗木の葉が展開する前には植栽を終了出来るようなスケジュールをすると良いと思います。
針葉樹人工林を皆伐して針葉樹を植栽
伐ったら植える、の典型です。針葉樹の木材生産を続けるのであれば、これまでと同じように植えて育てるのが最も確実です。伐る前の針葉樹(先代の造林木)の育ち方を見れば、その場所が以前に植えられていた樹種に適した場所かどうかがわかります。もし育ち方が今ひとつだったとすれば、樹種や品種を転換するのがいいかもしれません。
おそらく木材生産を目的にすると思いますので、ぜひ、経営という視点で樹種、植え方、その後の育て方を考えて、植栽に移ってください。
針葉樹人工林を皆伐して広葉樹を植栽
針葉樹人工林が多すぎるので、広葉樹林に戻したいという場合には、広葉樹の植栽を検討してみてください。天然更新だとどんな樹種が生えてくるかわからないことが多いので、この樹種の森林にしたいという目標樹種があるなら、その苗木を植えるのが近道です。ただ気をつけなければならないのは、植栽場所と樹種のマッチングです。広葉樹は全般に、針葉樹よりも土地を選びます。不適地に植えてしまえば、まともな成長は望めず、余計な手間もかかります。また、広葉樹を植栽するときは、木材生産を視野に入れるのか、そうでないかをよく考えてください。それによって樹種の選択が違いますし、植えてからの育て方も変わるからです。
針葉樹人工林を皆伐して天然更新
皆伐した後の天然更新は、土の中で休眠していたタネ(埋土種子)や飛んできたタネが発芽した実生か、広葉樹であれば伐り株からの萌芽によります。
針葉樹人工林には、ふつう高木性広葉樹がいないので、萌芽再生するのは林内に生育していた低木類です。また、その土に眠っているタネの多くは先駆種と呼ばれるタラノキやヌルデ、アカメガシワ、カラスザンショウといった樹種です。近くに母樹となる広葉樹林がなければ、針葉樹人工林を伐っただけで高木からなる広葉樹林にするのは難しいと考えてください。もともと生えていた針葉樹のタネから天然更新させることも不可能ではありませんが、タネの発芽条件や他の植物との競争を考えると、技術的なハードルはかなり高いものになります。
再生させる森林をどのような森林にしたいかと、それが天然更新で可能かどうか、事前に良く検討する必要があります。
針葉樹人工林を皆伐せずに植栽
-強度に間伐して植栽
かつて、針葉樹人工林を強めに間伐して、その下に苗木を植える樹下植栽がブームになったことがあります。残念ながら、その多くが失敗したと言わざるをえません。どのように失敗したかというと、
1)下層の植栽木が光不足で衰弱・枯死した
2)上層木を伐採・搬出するときに下層植栽木を傷つけた
というものでした。下層植栽木の枯死は、とくに落葉広葉樹を植えたときが顕著でした。落葉広葉樹の耐陰性が低いからです。
もし樹下植栽を選択するなら、後に上層木を伐採・収穫する際に下層植栽木が傷つくかもしれないという覚悟をもち、下層植栽木が育つために必要な光条件を知り、上層木の枝が張って暗くなってもその条件が保たれるように十分に明るくして、下層植栽木がどのくらいの大きさ(樹高)になったら上層木を伐るのかを決めておくということが必要です。樹下植栽は、皆伐によらない森林の更新方法なので、更新を完了させる(すなわち上層木を伐る)ことまで考えておかなければならないということです。
針葉樹人工林を皆伐せずに植栽
-小面積で皆伐して
森林全体を皆伐するのではなく、その一部を群状もしくは帯状に皆伐して植栽するというパターンです。ひとまとまりの伐る面積が小さければ群状択抜、1筋の伐る幅が狭ければ帯状択抜と呼んでもいいでしょう。まとまった空間ができ、そこに植栽することになるので、「皆伐して植栽」と同じに考えて大丈夫です。ただ、この先も植栽木が十分に育つだけの広さの面や帯を確保しなければならないことに注意してください。
群や帯によって樹種を変えたりしやすいとか、対象面積が小さいのでシカの食害を防除しやすいなどのメリットがあります。全体にどのように群や帯を配置するがという空間的デザインと、どのように伐り進めて更新させていくかという時間的デザインが重要になります。
様々な森林のご紹介
森林は場所や目的によって様々な情景を見せてくれます。そして長い年月で人と向き合い森林の役割をそれぞれ見出してくれます。
森のデザインはそのスタートです。
どのような森林を目標にするのかを決め苗木を植えることで森林と共に成長し森林からの恩恵を受け共存していく。
そんな森林デザインを支援したいとおもいます。